安東次男のすべての詩、すべての句、代表的な評論が一冊におさめられ、まとめて俯瞰できるようになった。
ここには安東次男という詩人のエッセンスが、ぎっしり詰まっていて、その作品に使われた日本語ということばの魅力を、あますところなく伝えている。しかも、その無駄のないことば遣いには、まれに見る、硬質な手触りがある。
この詩人は、その作品行為に対し、完璧であろうとすることをあえて避け、未完であることを目指した。彼はおのれの作品に、そこから次の者が受け継ぐほつれ、つながり、といった「歯型」のような、抵抗感のある触感をこそ刻み付けようとしたのではないか。次の者が受け継ぐ、手がかりとして。それはこの日本という湿地において、なんとか「他者」を迎えようとする、全身全霊をかけた作業の結果ではなかったか、といま、わたしなどは思うのだ。
表紙には、この詩人が大好きだった色、濃紺の、ざっくりとした布が貼られている。出版されたばかりの、この「安東次男全詩全句集」の内容を以下にあげておく。
詩集 『六月のみどりの夜は』定本
『秋の島についてのノオト』
『人それを読んで反歌という』 CALENDRIER 補遺
CALENDRIER 定本
詩集補遺
詩集資料
句集 『裏山』
『昨』
『花筧』
『花筧後』
『流』
句集補遺
評論 現代詩の展開
「澱河歌」の周辺
風狂始末
狂句こがらしの巻
鳶の羽の巻
梅が香の巻
年譜、解題、著作目録