枝の鵙は
垂直にしか下りなくなる
獲物を追う獸は
もう弧を描いては跳ばない
道に忘れられた魚だとか
けものたちの隠し穴だとか
ころがっている
林檎の歯がただとか
じつにたくさんのものが
顕われてくる
十一月の自然は
いろんな形の鍵を
浅く埋葬する
裸の思考のあとに
もうひとつの
裸の思考がやって来る
饑餓のくだもののあとに
ふかぶかと柄をうめるくだものがある
その柄は
信仰のないぼくのこころを愕かせる
柄について考えよう
見える柄について
見えない柄について
重さの上限と
軽さの下限について
反歌という名の
蔽われていない成熟について
ゆっくり考えよう
いま神の留守の
一つの柄
一つの穴
一つの歯がた
いっぴきの魚
自然は じつに浅く埋葬する。
「人それを呼んで反歌という」──『安東次男著作集第一巻』より
********
学生時代、「自然は じつに浅く埋葬する」という一行に驚愕、得心した記憶があります。