みみず けら なめくじ
目のないものたちが
したしげに話しかけ
る死んだものたちの
瞳をさがしていると
一年じゅう
の息のにお
いが犇めき
寄ってくる
小鳥たちの屍骸
がわすれられた
球根のようにこ
ろがっている月
葬むられなかつた
空をあるく寝つき
のわるい子供たち
あすは、
すいみつ。せみ。にゆうどうぐも。
(六月)
『安東次男全詩全句集』(思潮社刊、2008)
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また桜の季節が近づいてきた。この時期になると詩人、安東次男の命日が近いことを思い出す。4月9日。
彼が逝った年も暖冬だった。桜は例年よりも早く開き、3月下旬に盛りを迎えた。ストレッチャーに乗せられた詩人は、飽くことなく桜花を見ていたという。花のもとに逝った詩人を偲んで、今年もまた、彼の詩を幾篇か、ここに写す。