お待たせしました。チママンダ・ンゴズィ・アディーチェのデビュー作『パープル・ハイビスカス』が、今月20日に河出書房新社から発売です。(追記:5.18ネット書店で「在庫あり」になりました!)
異端になることを恐れるな。たった一度の自分の人生を生きるために 西加奈子
舞台はナイジェリアの南部エヌグという町、主人公カンビリは15歳の女の子。裕福だけれど、とても厳格なカトリック信者の父親の、強い支配のもとに暮らしています。兄のジャジャとは、ことばではなく、もっぱら眼差しで会話をするような暮らしです。
父親の妹で大学講師のイフェオマおばさんが、それをみかねて、兄と妹をスッカの家へ招いてくれます。おばさんの家で、いとこたちが自由に自分の意見を言い合う様子にカンビリは心底びっくりして、最初はガチガチに緊張しながらも、だんだん外の世界に目覚めていきます。
おばさんの家によく訪ねてくるアマディ神父に、いとこたちは辛辣な疑問を投じて、議論の花を咲かせています。一言もしゃべらない内気なカンビリを心配したアマディ神父は、彼女をサッカー場へ連れ出して、思い切り走ることを教えてくれます。うっとりするような美声のアマディ神父に、カンビリは淡い恋心を抱きますが……。
イフェオマおばさんはガーデニングに凝っていて、家の前の花壇には赤ではなく、紫色のハイビスカスが咲いていました。兄のジャジャがその茎を家に持ち帰って育てるのですが。。。自由という色を秘めた、紫色のハイビスカス。
この作品には、発表当時J・M・クッツェーからこんな賛辞が寄せられました。
宗教的不寛容とナイジェリアという国家の酷薄な面に、あまりに年若くしてさらされた子どもの、繊細で心に沁みる物語。 J・M・クッツェー
2003年に米国南部にある小さな出版社アルゴンキンから出た、アディーチェの初めての長編作品。『半分のぼった黄色い太陽』や『アメリカーナ』にくらべると登場人物も多くないし、人間関係もそれほど入り組んでいないので、初めてアディーチェの作品と出会うには、この本が最適かもしれません。