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「硬派書評」をうたう図書新聞(2016年8月27日発売号)にも『鏡のなかのボードレール』(共和国)の書評が載りました。評者は詩人の田中庸介さん。この本の書き手と本自体の構造的関係を「メタファー」という語を用いて解明する、とても力のこもった評です。なみなみならぬ意気が伝わってきて感動しました。それも一面に掲載、向かって左手です。偶然ながら、右手には奥田愛基さんのプロフィールがあり、西谷修氏の論考が。また、なかには管啓次郎さんらの『地形と気象』の書評もあって....読み応えたっぷりです。こうしてありがたくも書評が出そろうと、自分がなにを書いたのか、それが誰にどんなふうに受け止められたのか、ということが客観的にわかってきます。書き始めたときや、本を出したばかりのときには、まったく見えなかった視点がおぼろげながら見えてくる。ずらりとならぶ書評者はすべて男性。予想はしていましたが、例外なく、でした。毎日新聞──池澤夏樹氏北海道新聞──野村喜和夫氏日経新聞──陣野俊史氏週刊読書人──芳川泰久氏図書新聞──田中庸介氏東京新聞・中日新聞──男性記者?「本の雑誌」──都甲幸治氏でも、実は、女性読者からの感想もたくさんいただいています。「ボードレールからクッツェーまで、黒い女たちの影とともにたどる旅」というところに鋭く、強く反応してくれる方々が多い。ただし、それは活字にはなりにくい感想やことばで、まさに「境界の文学」のラインのあっちとこっちで、ぱっきりと分かれる、ということのようでもあります。そこにもまた、いろいろ考えていくヒントが埋まっていそうです。とても興味深い結果です。読んでくださったみなさん、どうもありがとうございました。
まだまだ旅は続きます。これからもどうぞよろしく!
Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee