Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2011/11/19

UCTへ──ケープタウン日記(4)

11月18日午後6時10分、テーブルのうえの温度計は26.2度を示している。この時刻になっても初夏の陽差しはまだまだ強く、じかにあたると痛いくらい。金曜日の午後とあって街は週末気分だ。

 今日はケープタウン大学へ行ってきた。街の中心部からすこし離れた山の中腹に位置するこの古い大学は、さまざまな歴史的な建造物が多く、初夏の緑のなかに樹木の香りがただよう。

 突然おとずれたにもかかわらず、図書館の受付の人も、管理係の人もとても親切に応対してくれた。クッツェーさんの三部作をこれから訳すために、彼が学生として、あるいは教授として長い間すごした場所をちょっとだけ見てあるきたい、と訪問の目的を伝えると、わざわざ案内係として学部の教官を呼んでくれたのだ。

 細身のアレックスさんというその方は学生時代クッツェーさんの授業をとったことがあるという人で、『Youth』の第一章に出てくる図書館のエピソードについて話すと、わざわざいまはもう使われていない図書館の迷路のような古い部屋や地下部分を案内してくれた。
 そして英文学部の建物へ移動し、クッツェーさんが授業をしたという教室を見せてもらった。こじんまりとした階段教室だった。英文学部が入っているのはアイビーのからまる落ち着いた建物で、いちばんうえの写真は横から見たところ。まんなかの写真は建物の入り口に立てられた案内。

『デイヴィッドの物語』の最後のほうに出てくるローズ・メモリアルのカフェでランチ。「白人中産階級のモフィーな自然食レストラン」として知られる場所である。たしかに、食事をしているのはたいてい白人で(黒人女性もひとりいたかな? でも連れは白人だった)働いているのは黒人orカラードという典型的な構図だ。

 ちょうど学年末試験が終わったところで、キャンパス内は学生の姿がぱらり、ぱらり。斜面にひょろりとのびた松の木々のあいだからテーブルマウンテンが透かし見えた。