Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2011/11/24

タウンシップとカッスル──ケープタウン日記(8)

今日(付記:南アフリカ時間で11月23日/水曜日)のケープタウンは、もっともケープタウンらしいお天気だとガイドさんがいうように、空がまっくらになって雨が吹きつけ、ごうごうと風が吹いている、と思う間もなく、太陽が顔を出してがんがん照りつける。これが何度も、何度もくりかえされる天気だった。

ランガの案内所
昨日(11月22日/火曜日)はランガ、カエリチャ、ググレツといったタウンシップをまわった。アパルトヘイト時代につくられた黒人専用居住区だが、隔離、分離して住まわせるという政策自体は破棄されたものの、いったん出来上がったコミュニティは失業率の高さや、なかなか予定通り進まない政府の住宅政策のため、そのまま残る、というより逆に広がっているようだ。

広い、広い、カエリチャ
それぞれタウンシップごとに特徴があって、古いランガは壁画が美しいインフォメーションやしゃれたクラフトセンターがあったり、ググレツは歴史展示に力を入れていたりとじつに興味深かった。街からもっとも遠いカエリチャはすごく広い。黄色い砂地が果てしなくつづく。自分はいまケープフラッツのどまんなかにいるのだという感じがひしひし。
 『マイケル・K』の第二章で、逃亡するマイケルを追いかけて、砂に足をとられながら医師が走る場面があったけれど、あれがケープフラッツだ。

 テーブルマウンテンにもロープウェイでのぼった。ほぼ垂直の断崖絶壁が目の前に迫ってきて、ぶつかる! と思わず目をつぶりたくなるようなすごさだ。頂上の風の強さは半端ではなかった。気温も麓の駅より6度ほど低い。またしてもダッシーが一匹、もくもくと草を食べていた。
 このダッシーという動物、じつは「象」の仲間だというのだから驚く。見かけはアナグマとか、げっ歯類のような感じなのに。コイの人々の神話ではカマキリは神さまでこのダッシーが奥さん、なのだそうだ。ふしぎな、ふしぎな世界観。標識で仕入れたまめ知識である。


カッスルの入口
今日はケープタウン滞在最後の日。五角形の要塞、カッスルへ行ってきた。東インド会社の砦としてつくられて、現在も西ケープ州の陸軍本部がおかれている場所だ。正面入り口に立ったとき、『youth』で青年ジョンが「何曜日の何時にカッスルの前に出頭せよ、持ち物は洗面具のみ」と書かれた召集令状がくるのではないかと不安に駆られる場面を思い出した。<了>