
1997年の「Boyhood/少年時代」、2002年の「Youth/青年時代」、そして2009年に出た「サマータイム/Summertime」が一冊の書籍にまとめられて、この9月、いつものようにイギリスの出版社 Harvill Secker から、アメリカでは、これまたいつものように少し遅れて10月に出る。
自伝的三部作は「Summertime」が最後、と著者自身が明言していたけれど、「一冊にまとめる」ことがなにを意味するのか興味深い。ここには見逃せない、著者自身の強いこだわりが見て取れる。それぞれのサブタイトルだった「Scenes from Provincial Life」が三部作をつないできたが、今回これがメインタイトルになった。
「地方生活からの叙景」

クッツェーのことば使いにはいつも、先人たちの作品やことばと響き合うものが隠されているが、このメインタイトルもまたそう。友人から指摘されて気づいた、というか思い出したのだが、これはバルザックの「人間喜劇」と響き合っているらしい。調べてみると、そのなかの「Scènes de la vie de province」をそっくり英語にしたものだということがわかった。

Wer den Dichter will verstehen
muß in Dichters Lande gehen.
– Goethe
無手勝流に訳してみる。
Anyone who wants to understand the poet
must go to the poets' country.
- Goethe
文字通り解釈すれば「詩人を理解しようとするなら、詩人の国に行かなければならない」、つまり「青年時代」は全体の三分の二ほどロンドンを舞台としてはいるが、そこに登場する詩人志望の青年/ジョンを理解しようとするなら、彼の国/南アフリカへ行かなければならない、ということか。
やっぱりなあ!