Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2013/05/05

昨年秋に手紙を朗読するクッツェーとオースター

 またまた動画を貼付けます。
 2012年11月にジョン・クッツェーとポール・オースターがニューヨーク州立大学で、『Here and Now』からそれぞれの手紙を朗読しています。



 ポールが、カンヌ映画祭でチャールトン・ヘストンと話をし、すぐまたシカゴで彼の姿を見かけ、さらにまたニューヨークのホテルで偶然エレベーターから降りてきたこの老俳優を見かける経験をしたと書いた手紙を読みます。そしてポールがこの俳優の名前を口にしたとき聴衆から笑いが.....

 ジョンの手紙のほうは、ポールの手紙にくらべるとおよそ半分くらいの長さで、2通つづけて読みます。若いころチェスにはまっていたこと、初めてニューヨークへ渡る船のなかでチェスの競技に参加して、最後まで勝ち残ったけれど、下船する時刻が迫り、対戦相手のドイツ人学生ロベルトと引き分けたが、それがはたして正しい判断だったか念頭から離れなかったこと。心もそぞろでオースティンへ向かうバスのなか、彼はチェスの手ばかり考えて、頭が狂人のようになっていたことを書きます。それ以来、彼は二度とチェスをしなくなったと。
 このジョンの手紙は今月末に出る雑誌「COYOTE」に訳出しました。本が出る一足先に日本語になって発表されます。
 もう一通は名前について。

 ポール・オースターはこの映像と音声を聞く限り、低く、しかも朗々と響き渡る、という形容がふさわしい声の持ち主です。一方のジョン・クッツェーはおなじみの渋い、ハスキーな、抑えた声ですが、この声がまた彼の文体のように、一瞬しんと静まり返って聴く者は耳を思わずそばだることになります。こうしてみると、朗読する調子というのは、あるいは声とういのは、彼らの文体そのものをじつによくあらわしているように思えます。楽しめます。