2026/06/23

アイヴァン・ヴラディスラヴィッチ Ivan Vladislavić を紹介しました

 柴田元幸氏編集のMONKEY6月号で、英語で書く南アフリカの作家アイヴァン・ヴラディスラヴィッチ Ivan Vladislavić を紹介しました。作品は「首相が死んでしまった」。初期の短編です。

 13人の「この人たち、本邦初訳です。」という特集。

 ヴラディスラヴィッチは1957年にプレトリアに生まれて、現在はヨハネスブルグに住んでいます。名前からわかるように、東欧系。父方はクロアチアからの移民だそうです。

 写真や絵画との関連作品が多く、ヴィジュアルな要素をことばでシュールに描き出す作家。「首相が死んでしまった」に出てくる編み物をするエキセントリックなおばあさんが出色です。タイトルはこのおばあさんがラジオを聞いていて、ニュースで首相が刺殺されたことを耳にして叫んだことばです。

 南アでは、1948年に立ち上げられたアパルトヘイト制度の実質的な骨組みを作ったヘンドリック・フルヴールト(1901~1966)という首相が、国会開催中に刺殺されるという事件が起きています。作品が描かれたのは事件が起きたときからぐんと下った80年代。検閲の厳しい時代に書かれた作品なので、暗に含みをもった表現が盛り込まれていて、なにげなく、一見フツーに描かれていることばの裏に、とびきり辛辣な揶揄が含まれている、そんな短編です。物語の後半にかけて、不穏な感じが勢いづいていく様子がなんとも。

 表紙をアイヴァンさんに添付ファイルで送ったら、愉快な表紙に描かれているほかの乗組員が誰なのか興味津々です、と返事が来ました。雑誌は現在、ヨハネスに向かっているはず。南アは郵便事情が危ういのでしっかり書き留めで送りました!


2026/06/12

ふた月たったミニトマト⎯ちいさい実がすずなり

  ミニトマトが苗でやってきたのが4月13日だったから、ちょうど2ヶ月が過ぎた。

 ベランダでグイグイ枝を伸ばした。季節はずれの台風なんてのもあったけど、強い風にも負けずに小さな実がついた。それがふくらんで、赤くなっていく。

 強い風向きで葉っぱが傷まないよう、鉢を動かしているあいだに、実をつけた茎が一本だけ折れた。ぷらぷらと垂れ下がっていたので、仕方がなく、もいだ。まだ青い。

 真っ先に花が咲いて実をつけたいちばん下側の枝に、数えると14個ほどの実がなっている(写真)。下から順番に花が咲いて実をつけてきた。目を凝らして数える。房は9つ。まだ黄色い花が付いている房もあるけれど、いずれ小さな果実を垂らしてくれるだろう。

 トマト自身の高さがわたしの身長を超えたところで、先留めをした。

2026/06/06

C・N・アディーチェ『半分のぼった黄色い太陽』河出文庫、発売です

発売日は6月8日ですが、版元サイトも「在庫あり」になって、書店にはすでに並んでいるようですので、ブログも早めにアップすることにしました。

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 1960年代の最後に「地上に3年だけ存在した国」ビアフラ。その国旗に描かれていたのが「半分のぼった黄色い太陽」でした。

 原作 Half of a Yellow Sun が出版されたのは2006年、この年のオレンジ賞(現在の女性文学賞)をこの賞始まって以来の最年少作家としてチママンダ・ンゴズィ・アディーチェが受賞。そして2020年に過去25年の受賞作のなかで最も人気のある作品に選ばれています。

 単行本の訳書が出版されたのが2010年、その年にアディーチェ自身が初来日しました。それについては何度も書いたので、左上の白いスペース内に検索文字を入れるとすぐに出てきます。

「単行本訳者あとがき」がすでに十分長いので、今回は簡潔に書きましたが、文庫化にあたって再読したなかで、現実と照らし合わせると、なんと言ってもいちばん切実に迫ってきたのはここでした。

⎯⎯戦争というのはある日、突発的に起きるものではなく、なにか大きな事件が起きても毎日の生活はそれまで通りつづき、ちょっと変わったかなと思いながら、まあたいしたことはないと思っているうちに、後もどりできないところまで進んでしまう。追い詰められると、大義を無理に信じ込もうとしたり、身内のなかに敵を発見することで結束をかためる集団意識がはたらいたり、歴史の犠牲者が一方でそれをとことん推進する者にもなりうることがわかる⎯


 この作品の日本語訳が刊行されたころのチママンダ・ンゴズィ・アディーチェが発信していた意見、つまり「アフリカ」を誰がどういう視点から書く時代かについて、もっと詳しく知りたい方に、このブログ内の記事を紹介しておきます。よかったら!

『半分のぼった黄色い太陽』⎯「あとがき」に書かなかったこと(1)

『半分のぼった黄色い太陽』──「あとがき」に書かなかったこと(2)

『半分のぼった黄色い太陽』──「あとがき」に書かなかったこと(3)