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こういうところが聞き手を納得させるこの人の魅力なのだろう。くりかえしいいたい。そこには、ステロタイプなフィルターを通して相手を見るのではなく、この世界で、人と対等に出会いたい、対等な人間関係をつくりたい、という切実な願いが込められているのだ。
『半分のぼった黄色い太陽』の訳者あとがきを書くため、アディーチェのエッセイやインタビューをいくつか読んだり聴いたりしているうちに、彼女の発信することばの核心のひとつはそこにあるのでは、と思うようになった。
そのアディーチェがもうすぐやってくる。じかに話を聞くと、予想外の驚きや発見があるかもしれない。世界を見わたそうとする者を知らず知らず包んでしまう色眼鏡カプセルに、晴れやかな透明感が加わるかもしれない。そして、今年33歳になるこの作家の声に勇気づけられるかもしれない。う〜ん、ちょっとぞくぞく、そして、とっても楽しみ。(おわり)
『半分のぼった黄色い太陽』河出書房新社刊、2600円(税別)