Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2018/08/17

日経プロムナード第7回 クスクスの謎

金曜日の午後、日経新聞のプロムナードに第7回を書きました。

 クスクスの謎

 マグレブ料理をめぐる記憶の連鎖、あっちへ行ったりこっちへ来たり。最後はやっぱり翻訳をめぐる話に落ち着きました。

 先日、猛暑のなか、下北沢で食べたクスクスはおいしかったなあ。大勢でいっしょにわいわい食べて飲んで。でも、何度も行ったお店なのに、ひとりで行くとどういうわけか誰もが迷う。これもまたクスクスをめぐる謎のひとつだ。

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後日譚をひとつ。
コラムを読んだMさんから、こんなコメントをいただきました。

「クスクスのつぶつぶが粟だというのはパリで知り合った囲碁の先生のムッシューリムから聞いた話です。
 私たちが行ったのはモンパルナスのクスクス店だったと思いますが、これも最初ムッシューリムが案内してれた店です。彼によれば、もともとアフリカの郷土料理だったときは粟だったものを、ヨーロッパに持ってくるときに小麦の加工品に変えたというのです。その受け売りでいい加減な──

 いえいえ、面白い展開になったわけですから、ムッシューリムさんにも感謝です!
 でも、70年代のパリはいまと違って、マグレブ出身の人たちはまだまだ少数派でしたよねえ。現在のパリはがらりと変わって、ヨーロッパ系の人より、アジア、アフリカ、カリブ地域の出身者、そしてその子供たちが圧倒的な存在になっていると聞きます。クスクスもしっかり、美味しく食べられるはずです。