Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2013/11/28

複数のアフリカ(後)──ワイナイナのエッセイ

 予定より少し遅れていますが、もうすぐ出ます。「神奈川大学評論 76号 ──アフリカの光と影」

「複数のアフリカ、あるいはアフリカ ”出身 " の作家たち」と幾重にも括弧のつくタイトルで、3人の作家を紹介しました。このブログでも、ノヴァイオレット・ブラワヨ と J・M・クッツェー について書きましたが、今日は残りの一人、ピリ辛エッセイを書いているケニア出身のビニャヴァンガ・ワイナイナについて。
 
(最近までBinyavanga をビンヤヴァンガと表記してきたのですが、小野正嗣さんがある書評のなかで「ビニャヴァンガ」と書いているのを見て、ああ、そうか、ビニャヴァンガだわ、これ、と気がつきました。どうもわたしには変な癖があって、Anya などもついつい「アンヤ」と読んでしまい、Binyavanga もつい最近まで「ビンヤヴァンガ」と読んでいました。訂正します。sorry!)

 さて、今回訳出したのは2005年に、雑誌Grantaの特集号「アフリカからの眺め/The View From Africa」に掲載された 「アフリカのことをどう書くか/How to Write About Africa」という辛口エッセイです。このエッセイで彼が物議をかもしてから早いもので8年にもなりますか。その後、このエッセイは彼自身が立ち上げた出版社 Kwani Trust から出た文庫サイズの薄い本に入りました。右がそのカバー写真です。いかにも皮肉な、挑発的とも思えるイラストです。
 このエッセイ、あらためて読むと、いまだに耳が痛いところがあります。8年前に書かれていますが、古びないどころか、まだまだ鋭さは失われていない。それが良いことか悪いことか、問題は読む側にあるんだよなあ、とはたと考えさせられてしまうのですが、内容としては、ちょうどチママンダ・ンゴズィ・アディーチェのTEDトーク「シングルストーリーの危険性」と対になる、と考えるとその理由が想像できるかもしれません。
 ぜひ、じかに雑誌を手に取って、彼の文章を読んでみてください。これまでさんざん語られてきた靄のかかったアフリカへの視界が、からりと晴れてばっちり見えるようになるかもしれません。

 ワイナイナさんの著書『いつか僕はこの場所について書く/One Day I Will Write About This Place』については、2年ほど前にここに書きました。アディーチェさんの大の仲良し、というか同志というか、よくあちこちにいっしょに出没します。左の写真は2011年にサンタフェで2人がトークをしたときのもので、それについてはここです! トークも聴けるようリンクを貼ってありますので、よかったら。このトークを聞くかぎり、ホントに面白そうな人です。ウィットとユーモアが抜群です。

 今回、メールでやりとりするチャンスがあったのですが、その文面がまたなんともポップな感じでした。彼の著書を思わせる、ビートのきいたことば遣いが伝わってきて。この人のことばは、文体は、まったくもってユニークです! 彼の『いつか僕はこの場所について書く』も、まるでラップのような感じでことばが続き、そのリズムにのせられて読んでいくと、ふっと心打つ憤懣と悲哀が秘められていたり、せつない心情が込められていたり。だれか、ぜひ日本語にチャレンジしてください!!

 27日から、ナイロビではクワニ・トラスト創立10周年のイベントが始まったばかりです。もちろん、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェも参加しています!