Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2013/03/13

旅する「アフリカ」文学 ── 盛況のうちに終了!

昨日、六本木ミッドタウンで開かれた、「旅する”アフリカ”文学」が無事に終了。大勢の方々が熱心に耳を傾けてくれているのが伝わってきて、気持ちよく話すことができました。聞き手の管啓次郎さんの絶妙なさばきには、いつもながら脱帽。お世話になったスタッフの方々、聞きにきてくださった方々、みなさん、どうもありがとうございました。

 第一部は、何世紀も早くから世界を旅してきた「アフリカ」の文学について考え、J・M・クッツェーとチママンダ・ンゴズィ・アディーチェという対照的な二人のアフリカ出身の作家を切り口に話しました。

ジャズやアフリカン・アメリカン女性文学との出会い、マジシ・クネーネの翻訳の途中で出会った南アフリカや、クッツェーの「マイケル・K」との偶然ながら、ほとんどわたしの人生を変えた出会い。いま、アディーチェやクッツェーはどのようなスタンスで書いているか、その共通性と差異について。アディーチェは「アフリカをいま誰がどのように書くか」をポイントにし、クッツェーは端正かつ明晰なテクスト内に鋭い批判性、倫理性、思想性の深さを封じ込めること、などなど........

 朗読も、アディーチェの作品、クッツェーの作品からそれぞれ短い部分訳を読みました。

 第二部は、ぐっとリラックス。2011年に訪れたケープタウンの写真を使い、クッツェー作品に出てくる場所や土地を見ていただきました。長いあいだクッツェーが教えていたケープタウン大学の英文学部の入った建物や、青年時代アルバイトをした古い図書館の地下室、彼の研究室だった部屋、講義をした階段教室(映画「Disgrace」のロケに使われた)、彼が9歳から12歳まですごした内陸の町ヴスターの風景などを楽しんでいただきました。後半は時間が押して、予定していたポール・オースターとの「往復書簡集」からの朗読ができなかったのが残念!


 作家が徹底的に手を入れた自伝的三部作『Scenes from Provincial Life/地方生活からの情景』の第一部「少年時代」をいま一行一行、見直しているところです。オースターとの往復書簡集『Here and Now』も平行して進めますので、どうぞこちらもご期待ください。

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 左のモノクロ写真は、わたしが初めて見たクッツェーの写真です。80年代に入手したKING PENGUIN版『マイケル・K』のバックカバーに載っていたもの。あのころは、この写真を見て翻訳しようと決めた、という面食いでした! いまもあまり変わっていないかも/苦笑....ですが、来日した作家に訊いたところ、70年代に奥さんか家族が撮影したもの、だそうです。