Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/10/15

スタジオイワトの「トロイメライ」──2012.10.14


昨日、10月14日は小雨ふるなか、水道橋のスタジオイワトへ「トロイメライ」を観にいった。すごくよかった。この出し物は何度目かだったけれど、今回ほど心にしみることはなかったな。ことばも、音楽も。

   都市 それは ゆるぎなき全体
   絶対的な広がりを持ち 把握を許さず 息づき 疲れ 蹴おとし
   そこでは 全てが 置き去りにされて 関わりあうことなしに
   ぶよぶよと 共存するのみ
   個ハ 辺境ニアリ
   タダ 辺境ニアリ
   楽しみは あまりに稚なくて ざわめきのみが たゆたい続ける
   こんな夜に 正しいなんてことが 何になるのさ

 これは、1980年代初めに劇作家、如月小春が書いた「トロイメライ」のせりふの一部だ。2008年にシアターイワトで演じられたときより、今回はことばがぐんとくっきり、こちらに入ってきた。

 びらの最初にあるように、2008年のときは即興だった音楽が、今回は細部まで作曲されていた。これも実によかった。おなじみの「トロイメライ」のメロディーが、美しいピアノタッチで流れるたびに、こころがじんとなった。

 それは、なぜか、まあ、深く考えなくてもわかるいくつかの理由、たとえば、空間がちいさめで、演じる人たちと観客の距離があまりなくて密接な空間だった、とか──でも、いや、それだけだろうか、と再考してみる時間が、いま充ちてくる。