Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2009/01/05

アミラ・ハス──ガザには人道上の危機はない?

IAF missile hits two Gaza boys heating water over a fire/イスラエル空軍のミサイルが、火でお湯を沸かそうとしたガザの少年2人を爆撃 
Last update - 04:08 05/01/2009

ガザには人道上の危機はない?
Last update - 09:41 05/01/2009

Wounded Gaza family lay bleeding for 20 hours/怪我をしたガザの家族が20時間、血を流しつづけたまま 
Last update - 12:43 05/01/2009

             (タイトルが3度変わりました)
ハアレツ紙/アミラ・ハス


ガザでイスラエル軍が地上侵攻を開始して3時間後、土曜日(註/1月3日)の夜、午後10時30分ころ、砲弾あるいはミサイル弾がフセイン・アル=アワイディとその兄弟の所有する家に命中した。ぽつんと一軒立つその家に21人が住んでいる。家はガザ市ツァイトゥーン地区の東部、農業地帯に位置している。爆撃のために5人が怪我をした。80歳代の女性が2人(フセインの母親と叔母)、14歳の息子、13歳の姪、そして10歳の甥だ。

20時間たったいまも、怪我人たちは家の庭にある小屋のなかで血を流しつづけている。電気はない、熱源もない、水もない。親戚たちいっしょにいるが、水をくみに庭を離れようとするたびに、イスラエル軍が彼らを銃撃するのだ。

アル=アワイディは携帯電話で助けを求めようとしたが、ガザの携帯ネットワークは崩壊している。砲弾がトランスポンダー(応答機)を直撃して、電気もなければ重油もないため発電機を稼働させることができない。電話がつながる瞬間は、ちょっとした奇蹟のようなものだ。

日曜日の正午、アル=アワイディはついにSに連絡を取ることができ、Sが私に電話してきたのだ。Sは近くに住んではいても、何もしてやれなかった。

アル=アワイディとは8年前からの知り合いで、私はPHR/人権のための医師団へ連絡した。彼らはイスラエル軍の渉外局に電話をかけ、負傷者を脱出させる手配を依頼した。ちょうど正午を過ぎたころだった──記者会見の時間になっても、渉外局はPHRに電話をかけなおさなかった。

そのうち、だれかがなんとか赤新月社に連絡をつけた。赤新月社が赤十字に電話し、イスラエル軍と協力して負傷者を脱出させることを依頼した。それが午前10時半──日曜の夜の記者会見の時間になっても、赤十字はまだ脱出を実現できずにいた。

PHRと私が電話で話しているあいだ、正午ごろのことだが、Hが電話をかけてきた。彼が伝えたかったのは、2人の子ども、10歳のアフメド・サビフと11歳のムハンマド・アル=マシュハラウィが、ガザ市の自分の家の屋根にのぼって、火でお湯を沸かそうとしていたことだ。電気もないし、ガスもない、だから燃えている火が最後の手段なのだ。

戦車が砲弾を吐き出し、ヘリコプターが雨のように銃弾を降らせ、戦闘機が地震を起こしている。なのに、住民たちにとっては、お湯を沸かすことがハマスの軍事組織に加わるのとおなじくらい危険だ、と認識することは難しいのだ。

イスラエル軍のミサイルがこの2人の少年たちを直撃し、アフメドを殺し、ムハンマドに重傷を負わせた。日曜日の午後遅く、インターネットのニュースサイトが、2人とも死んだことを報告した。しかし、Hの携帯電話には応答がない。だから私は事実を確認することができなかった。

Hに地上電話で連絡しようとするのは無意味なことだった。土曜日、一発の爆弾が彼の住む地区の電話システムをすべて破壊してしまったからだ。ターゲットは印刷所だった(これがイスラエル軍のいまひとつの「軍事」目標なのだ)。印刷所の所有者は、以前UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)で働いていて退職した人で、退職金のすべてをこの店に注ぎ込んでいた。

Bの近所では、爆弾が水道の本管を直撃したため、彼女は昨日の朝からまったく水が得られない。「電気なしでやっていくことにはもう慣れました。テレビもないけれど、なにが起きているかは電話してくる友人の話で聞いて知っています。ある友人はレバノンから電話してきてくれました。ハイファからかけてくれる友人もいます。ラマラからも。でも、水なしで、どうやってやっていけますか?」

Aは事態への彼なりの対応をとった。「子どもたちを窓のところで遊ばせないようにしているんです。F-16機が飛んでいますから。子どもたちに窓のところで遊んじゃだめだと、危険だから。海からこっちへ爆撃してくる。東からも。空からも爆撃してくる。電話が繋がっているときは、みんなが殺された親戚や友人のことを教えてくれます。妻はいつも泣いてます。夜になると妻は子どもたちを抱いて泣きます。寒いのに、窓は開いたまま。外は銃撃と煙。家のなかには水もないし、電気もないし、暖房用のガスもない。なのに、あなた方(イスラエル人たち)は、ガザには人道上の危機などないという。教えてくれ、あなたがたは正気なのか?」

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