Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2022/09/13

J・M・クッツェーの新作 The Pole について

 いま訳している本について少しだけ書きます。

スペイン語版 El Polaco
 J・M・クッツェーの新作です。The Pole、最初このタイトルを見たときは、えっ! 南極とか北極とか、いわゆる極地か? と思いましたが、いやいや、これは「ポーランドの人」という意味でした。

 もちろん英語で書かれたテクストですが、クッツェーの覇権言語としての英語に対する批判的態度は揺るぎなく、今回もまず、スペイン語訳の El Polaco が7月1日に出版されました。ふたたびアルゼンチンのMALBAの出版局「アリアドネの糸」からです。

 これは2018年に出た『モラルの話』とおなじパターンですが、今回の翻訳者はマリアナ・ディモプロス、2018年4月にカテドラ・クッツェーのラウンドテーブルで舞台に上がったり、その後、オーストラリアとアルゼンチンの相互プログラムに参加していた作家、翻訳者です。オーストラリアに滞在する2人のアルゼンチン作家にクッツェーがインタビューした記事があって、そこでは非常に重要なテーマが議論されていたのをこのブログでも紹介しました。

 今回、ディモプロスには翻訳者としてだけでなく、作品が書かれるプロセスにも最初から関わってもらったと、クッツェー自身がスペイン語圏のニュースで述べていました。その理由は? 作品を読んでいただければ、よくわかりますが、登場人物の49歳の女性の考え方や言葉遣いなどについて、ディモプロスの意見をクッツェーが取り入れた、ということのようです。そのため、作品内の会話に違和感がない。

 どんな話かって?

 じつは9月6日に発売された「すばる」に少しだけ書きました。斎藤真理子さんとの往復書簡「曇る眼鏡を拭きながら 9」です。ぜひチラ読みしてください。

 上の写真は、9月に入ってすぐに到着したスペイン語版の書籍です。Amazon fr.から取り寄せました。