2015/12/07

J・M・クッツェーの『世界文学論集』をめぐって

──これからの「世界文学」のために──

先月、J・M・クッツェーの5冊のエッセイ集のなかから、厳選された、内容の濃い『世界文学論集』が、みすず書房から出版された。訳者は田尻芳樹さん。編集者は1989年に拙訳『マイケル・K』を担当してくれたOさん。

 このプロジェクトが立ちあがったのは、2012年から2013年にかけてのことで、作家の三度目の来日時にクッツェー氏、田尻氏と三人で、いまはなきホテル・ニューオオタニのカフェで打ち合わせをしたと記憶している。翻訳中の彼の自伝的三部作の疑問点を解決したのもこのときだった。あれは2013年の3月初旬だったから2年半がすぎて、しっかりと本になった。プロジェクトが順調に動き出してから、どんな本になるのかなあ、とわくわくしながらながめていた。
 その間、2014年11月にはオーストラリアのアデレードで開催された「世界のなかの J・M・クッツェー」で田尻さんは発表をして、わたしは毎日新聞にリポートを書いたりしたのだった。
 今回、出版されたこの評論集をめぐってパブリッシャーズ・レビュー」の巻頭ページに「これからの『世界文学』のために」というエッセイを書いた。この本について、というより、むしろ作家クッツェーの周辺情報、現在地のようなものと考えていただいたほうがいいだろう。それが、この文学論集を読むときの、きっかけ、刺激、あるいは補助のようなものになればいいと思っている。
 このレビューはタブロイド判の出版情報誌で無料。ぜひ。