Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2015/12/19

昨年、ジョン・クッツェーがチェルシー・マニングへ書いた誕生カード

誕生日おめでとう!
 
彼女はまだ獄中。あれから1年、
数年が経ったような気がするが。
J・M・クッツェーが彼女に書いた手紙を訳してみる。

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アデレード、南オーストラリア
2014年12月2日


チェルシーへ

誕生日を刑務所ですごすのはきっとあまり愉快なことではないと思うが、きみに知らせたいことがある。それはもっと広い世界では何千万、何百万もの人がきみのことを考え、きみに元気でいてほしいと思っていることだ。われわれはきみがデモクラシーに──つまり、人々が自らを統治する権利に──寄与する歩みを踏み出したことに感嘆する──そして、きみが逮捕されて以来、態度で示してきた不屈の精神ゆえにきみを尊敬する。その間きみはとても孤独で孤立していると感じてきたにちがいない。

僕自身はもう70代だから、きみが自由を取り戻す(きみの国の大統領が分別を取り戻してきみに謝罪する)ときまでいっしょにいられるとは思わないが、しかし僕はきみに知って欲しいことがある。それは僕が、きみの姿と、エドワード・スノーデンの姿が、いずれ合州国の郵便切手に載る日がくることを確信しているということだ。

お誕生日おめでとう。

ジョン・クッツェー

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付記:チェルシー・マニングとは、2010年に米国の機密情報──アフガン戦争やイラク戦争で非武装の人たちを米の戦闘機が攻撃しているビデオ等等──をウィキリークにもらした内部告発者、ブラッドリー・マニングで、2014年8月、35年の禁固刑を受けたその日に、自分はこれから女性として生きるという宣言をした。今年の12月17日で彼女は28歳になった。