机に向かうと窓の向こうに、濃いピンクの花芽がちらちら揺れる。寒彼桜が一足早く咲きはじめた。今年もまた、ヒヨドリがやってきた。2羽そろって桜の木の枝を大きく揺らして、どこかへ飛んでいった。
どんな災厄が襲ってきても、毎年、春はやってくるのだ。「春をうらんだりはしない」という詩を思い出す季節はやってくるのだ。
またやって来たからといって
春を恨んだりはしない
例年のように自分の義務を
果たしているからといって
春を責めたりはしない
わかっている わたしがいくら悲しくても
そのせいで緑の萌えるのが止まったりはしないと
あの有名なヴィスワヴァ・シンボルスカの詩(沼野充義訳)だ。今年もまた、この詩のことばを一行一行、噛み締める。