Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2014/03/25

こぶしの花が開く

夕暮れに、疲れきった頭を冷ましに散歩に出た。ひさしぶりにカメラを持って、まぶしい斜光のなかを歩いた。

根詰め仕事がつづいている。クッツェーの自伝的三部作のゲラ読みと年譜作成だ。620ページをゆうに超すゲラは、なかなか一気に読み通せない。それでも全体のめどはついてきた。あとがきに入れる写真の許諾ももらった。

 今日はぐんと気温があがって、こぶしが一気に花開いていた。ここは都心より数度低く、丘陵地帯の丘の中腹に位置しているので、まだ桜は川沿いの低地にちらほら。それでも花をもとめる目が、夕闇が迫るなか、ふくよかな白い花弁が焦げ茶色の枝からじかに開いているのを見つけた。足元には水仙もちいさな黄色い花を咲かせている。

 隣国、台湾では、話し合いも十分せずに強行採決した法律に抗議して、若者たちが立法院を占拠しつづけている。法律が法律だけに、野党はもちろん、大学の教師も、街の商店主も、市民も学生たちを支持しているという。どうなるのか。
 わたしが住んでいる国の紙媒体の大きな新聞は、なかなか詳細を伝えてくれない。写真も載らない。かろうじてネット上の情報が入手できる程度だ。こんなに大きな出来事なのに。
 
 それでも容赦なく、春はやってくる。今日もまた、容赦なく一日が閉じていく。