Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/08/05

豊満な姿のダフネ

湿った空気が、強い夏の光のなかで少しずつ軽くなって、微風が窓から吹き込む。そんな今日の朝は、気温は高くても気持ちがよかった。湿気が大の苦手なわたしには、好ましい東京の夏。

  まぶしい光のなかで、ローレルの木がずいぶん大きくなったことにあらためて気づいた。そこでぱちりと写真を撮った。7年前の春に丈1メートルほどの、根元が二股に分かれた若木を移植したとき、周囲の樹木の陰になってあまり陽があたらなかった。するとそのうちの1本がみるみる丈を伸ばして、てっぺんばかりがひょろりと長い姿になった。ところが、それから数年のあいだに、根元の樹皮を草刈りの刃でやられたもう1本のほうがつぎつぎに脇枝を伸ばして、いまではこんもり茂る樹影を形づくっている。

アポロンに揶揄されたエロスが放った矢のおかげで、アポロンはひたすらダフネを追いかけ、ダフネはひたすらそれから逃げようとする。父である川の神によって、すんでのところで月桂樹に姿を変えたダフネ。というのがギリシア神話の月桂樹にまつわる物語である。以来アポロンはいつも月桂樹を身にまとうことになったとか。

毎年4月にちいさな花をつけ、秋には黒い実もつけるこの月桂樹。いまではまちがいなく豊満なダフネの似姿といってよさそうだ。