その日わたしは朝からタウンシップに出かけ、午後はテーブルマウンテンにのぼり、国会前でデモが行われているのを見逃してしまった。曜日を勘違いしていたこともあったけれど・・・
南アフリカ国内だけでなく、アフリカ全土に大きな影響をおよぼす可能性のあるその法案には、南アフリカ国民だけでなく、多くの南ア出身者が反対意見を述べつづけていることは以前から伝わっていたが、先日、ガーディアンがナディン・ゴーディマや J・M・クッツェーから取材した発言を掲載したので、ここに訳出する。


アパルトヘイトからの解放運動をたたかった現在の南アフリカ与党 ANC内に、政権取得以前からすでに武器売買をめぐる汚職や腐敗、あるいは人権蹂躙を行っていることは多くの人たちが指摘してきたことだ。まさに「権力は腐敗する」を絵に描いたような構図だ。
秋に訳が出るゾーイ・ウィカムの『デイヴィッドの物語』は、そんな解放運動の内部事情を彷彿とさせる作品でもある。
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付記:クッツェーとゴーディマは長いあいだ、なにかというと比較されてきた2人の南ア出身のノーベル賞作家だった。こうして見ると、あらためてその違いがわかる。ゴーディマがアパルトヘイトと南アフリカという国についてみずからの経験を交えて批判するのに対し、クッツェーは現在、世界中で起きている(政治、経済などの)動きをふまえた、国家の行動として南アフリカ政府の動きを批判している。
このスタンスの違いはそっくりそのまま、作品を書くスタンスの違いにも投影されてきたといえる。
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さらに付記:6.11──いちばん上の写真はケープタウンのガヴァメント・アヴェニューにある国会。アパルトヘイト末期を舞台とした『鉄の時代』で、主人公ミセス・カレンが「恥の館」と呼んで、火の点いた車ごと突入しようと考えた建物だ。