待望の本が出た。
都甲幸治さんの『21世紀の世界文学 30冊を読む』(新潮社)だ。これを読むと、この切羽詰まった日本で「世界文学の可能性」がスパッと見えてくる。
ちょっと長いけれど「あとがき」から引用する。
「完全にフラットになった世界の中で、自分と同じような問題を抱え、苦しんでいる人々と繋がる。そうした当たり前のことが、ようやくインターネットなどの力で実現するようになったんだと思う。憧れに基づく愛なんて浅すぎる。深い関係においては、表面的な思い込みなんて役に立たない。考えてみればこれはわくわくする状態だ。だって隣の人より、地球の裏側の友達のほうが自分のことをよくわかってくれるかもしれない状況なんだから。そうした意味での世界文学は最近始まったばかりだ。むやみに仰ぎ見ることをやめてはじめて、他者を腹の底からきちんと尊敬できるようになるんだと思う。そのとき、外国と日本という境界なんて心の中から消えているといい」
ここを読んでわたしも「腹の底から」熱いものがわいてくるのを感じました。それを「ださい」なんていわせません!
かのジュノ・ディアスの訳しおろし短編「プラの信条」も入ってますよ〜。
超、おすすめです!!!
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付記:タイトルは正確にいうと「21世紀の英語で書かれた世界文学」かもね。あ、例外がひとつ、ロベルト・ボラーニョはスペイン語から英語への翻訳です。
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付記の付記:「英語文学」だけで「世界文学」といえるのか? という内容のご意見を複数の方からいただきました。たしかに、ではあります。しかし、この本をわたしが「買う」のは、翻訳文学に対する訳者、読者の従来のスタンスそのものを大きく変えようとする力がみなぎっているところです。それは世界との向き合い方、他者との関わり方を変えようとする切実さでもあって、そこがいいと思う。