Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2019/09/06

動画:ソウルで講演するチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

8月末にソウルの梨花女子大学を訪れて講演をするチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの動画がアップされました。

 アディーチェは8月17日に上海のブックフェアで基調講演を行って、その足で韓国を訪れました。先日のメールにその簡単な感想が書かれていましたが、8月20日の梨花女子大で行なわれた講演のようすを見ても想像できるように、ソウルでは大歓迎を受けています。ホールは満席、ステージの裾にあがって膝をかかえながら見入っている人もいます。(たぶん学生!)



 アディーチェは、ジェンダーをめぐるさまざまな問題点を具体的に述べながら、性暴力についてはっきりと語っています。なぜそれが「暴力」としてきちんと扱われないか、それは女性が男性とおなじ人間として対等に認められていないからだと分析しています。この不平等をことばにすることが、無意識に内面化されている問題点をあらわにする第一歩だと。法律を変えることは大切だけれど、マインドセット、つまりものの見方や考え方を変えることはもっと重要なんじゃないかと。
 そして、男性には性衝動を抑制できいない動物的、野性的なものがあるとするなら、そんな野性的な存在に社会を統御する政治的権力をもたせるわけにはいかないと。けだし名言です。

上海で、2019.8.17
さらに、歴史的な視点も入れながら突っ込んだ話もしています。たとえば韓国ではかつて女の子は10歳で結婚させられたけれど、いまはそうじゃない、これは文化が変わったからだ。「文化」は民族が存在し維持されていくことに必要だけれど、それは人が作ってきたものだから変えられるし、実際に変わってきたのだと。
 ちいさいときから男の子、女の子をジェンダーの慣習の枠内におさまるように育てることが、無意識に、いまの男尊女卑「文化」を保持することにつながる。男の子は泣いちゃいけない、強くなくちゃいけない、と刷り込まれて育つと、やさしさを見せることは自分が弱いことを認めることになりはしないかという恐れになっていくと。この話には『イジェアウェレへ』で指摘されていることも重なるけれど、さらに発展させる視点も含まれていて、とても興味深い。

ソウルで、2019.8.20
また、成功する女性は完璧でなければいけないというプレッシャーもおかしいと。法律違反をした女性の政治家が「女だから」という理由で男の政治家なら受けないバッシングを受けた例をあげ、あたりまえだけど、女性には善良な人も悪意にみちた人もいて、それは男性とおなじだと。成功する女性が男性以上に完璧に「善」でなければいけない、という考え方はちがうだろうと。

 アディーチェからきたメールには、日本にもまた行けたらいいな、みたいなことばがならんでいました。機は熟しているようです。どこかが正式に招待して、大きなホールで講演をし、それがTVに流れるという展開になってほしいものです! チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの再来日が近いうちに実現しますように! 
 そんな祈りをこめて記録としてここに残すために、上海とソウルでの写真をtwitter から拝借します。悪しからず!