Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2019/09/09

台風15号の突風でローレルが倒れた

昨夜の風はすごかった。雨はたいしたことはなかったけれど、風が、とりわけ突風が、ものすごい勢いで吹きつける。ものが飛ぶ。ひっくりかえる音が騒がしい。

 夜半、空気に臭気がまじってきた。工場地帯の煙突からたちのぼる黄色い煙を思わせるような異臭だ。窓のすきまから室内に容赦なく侵入する。これがめっぽう苦しい。胸をかきむしりたくなるほど、痛がゆく、苦しい。「切羽のカナリア」の身は異変をいち早く察知して、窓とドアをきっちり閉めて、扇風機を弱風にしながら、空気清浄機のフィルターを新しくしてフルパワー運転にする。

 一夜あけて、陽の光が差し込む窓の外を見ると、なんと、愛するダフネが倒れている。昨夜の突風であおられたせいで、月桂樹が、斜めにおよそ45度の角度に身を傾けて、根っこを陽にさらしているのだ。あんなに背が伸びた樹木の根も、こんなに浅かったのかと驚く。


 秋に引っ越しをしたので、移植するなら春がいいという助言にしたがい、翌年の春を待って1メートルほどの若木を植えた。それがみごとに葉と枝を繁らせて、毎年4月中旬になるとかわいらしい小花を咲かせ、夏には直径1センチほどの硬くて丸い実をつけるようになっていたのだ。その木が、昨夜の嵐で倒れた。移植されてから15年と5カ月か、とまるで亡くした子の年齢を数える親のように、指を折る。
 
 寒波、熱波、山火事。グリーンランドの氷が溶けて、南アメリカのアマゾンでも大規模な山火事が起きて。熱波以外は、まだまだ遠くで起きていることのように思えたが、どうと倒れた樹木の根を目前にすると、なにやら迫ってくるものがある。