2015/08/11

パウル・クレーと夏日記(10)── Integrity

 何年か前に、翻訳家の大先輩から「あなたには integrity がある。翻訳家としてのintegrityをもっている人はそういない」といわれたことがる。「ん?」「はっ?」と一瞬、ことばを飲み込んだけれど、とても嬉しかった。嬉しかっただけではなくて、背筋がぴんと伸びるような気がした。過分なことばだ、と思った。
 思えば、不器用に、たどたどしく、doggidly というしかないやり方で続けてきた翻訳という仕事も、その大先輩との出会いから始まったのだ。

 そして、integrity という語で思い出すのは、アドリエンヌ・リッチの詩「Integrity」。この出だし、一度読んだら忘れられない詩句になった。

   A wild patience has taken me this far
   
   暴れまわる忍耐力がこれほど遠くまでわたしを連れてきた



立秋もすぎたけれど、それは名ばかり。残暑のなかで今日もまた、クレーの絵を一枚! this far!