Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2014/01/01

賀正/ポプラ通り12番から

あけましておめでとうございます。 

今年もどうぞよろしくお願いします。

ヴスターの町外れの、鉄道線路と国道に挟まれた住宅地に彼らは住んでいる。住宅地を走る通りには樹木の名前がついているが、樹木はまだない。住所はポプラ通り十二番。住宅地の家はどれも新しくて・・・・・・」──自伝的三部作第一部『少年時代』の冒頭。


 元旦からどさりと届いた、クッツェーの『少年時代』のゲラ読み。今年もまた、まずは、明けても暮れてもクッツェー漬けの毎日だ。

 ポプラ通り/POPULIERLN=Populier Laan/Poplar Avenue は、少年ジョンが住んでいたころ、まだ樹木は一本もない新興開発住宅地だった。2011年11月に訪ねたときは、写真のように、緑のおいしげる住宅街になっていた。


 春には、彼の自伝的三部作を店頭にならべなければ。ゲラ読み、あとがき、年譜、などなど、まだ作業は残っているけれど、それは訳者にとっては愉楽のときだ。
 ポール・オースターとの往復書簡集もある。これもまた楽しみな作業だ。そして。念願の詩集『記憶のゆきを踏んで』もクッツェー三部作とほぼ同時に完成する。さらにさらに、アディーチェの新作『アメリカーナ』も待っている。

 2014年、それは「ことば」が試される年かもしれない。ことばを使う人間が試される年でもあるだろう。あたうるかぎり意識の殻をやぶって。あたうるかぎり国境も、言語の壁も、押し寄せる偏狭なパトリの暴力も超え、伝え合う広々とした空間へ、「ことば」が人を誘うことができるかどうか。実りの年となることを祈って!