Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2010/09/07

ブルームズデイってソウェト蜂起の日なんだ!

9月に入っても暑い暑い東京で、ゾーイ・ウィカムの『デイヴィッドの物語』を訳していて、こんな箇所に行きあたった。

<わたしは彼に、ドアがノックされたことに答えてジェイムズ・ジョイスが口にした「カム・イン」が誤って記録された話をする。ジョイスの筆記者だった若きベケットがテクストにそれを含めてしまったのだ。そこでふと思い出したわたしは、柄にもなく、きゃあああっと叫んでしまう。

「青年の日」って、そうよ、ソウェト蜂起の日の6月16日ってのはジョイスの「ブルームズデイ」じゃないの、わたしは興奮してしゃべりつづける、ことばの革命が起きた日よ。考えてもみて、黒人の子供たちがアフリカーンス語は抑圧者の言語だといって反乱を起こしたまさにその日に、かのレオポルド・ブルームは栄養にみちみちた朝食を食べはじめ、さも旨そうに、内臓を食べて──
 デイヴィッドが顔をしかめ、首を振ってそれを遮る。>

 ふ〜〜ん、そうなんだ!
 南アフリカは北ケープ州、ナマクワランド出身の作家ウィカムの、すばらしいユーモアに、あらためてニヤリとなる。