
短編「アメリカにいる、きみ/You in America」は最初、Zoetrope という雑誌に掲載されました。2001年冬号です。このバージョンは『Discovery Home』(Bellevue:Jacana, 2003)という本に入りました。2002年のケイン賞受賞作品を集めたアンソロジーです。
ところが2004年、この短編はタイトルが「なにかが首のまわりに/The Thing Around Your Neck」に変わり、内容にも少し手が入り Prospect という雑誌に再録されて、さらに2年後には『This Is Not Chick Lit』(NY. Random House, 2006)や、Ms. Magazine(2006、夏号)にも再々録されることになります。
訳者は最初のZoetrope 版を読んで、日本独自版短編集の企画を立てましたが、最終的には、2007年に出版する時点での最新バージョンを使いました。あとがきにも書きましたが、作家から「これを使って」と新しいバージョンが送られてきたからです。

そこで、この短編をステージにのせるため、全面改訳することにしました。作家が来日して、朗読するとなると、やはり、最新バージョンですよね。
注目したいのは、その進化の中身です。ナイジェリアのラゴスから運良く米国のヴィザを取得して渡米した「きみ」が、そこで出会う違和感、カルチャーショック、ステロタイプのアフリカ人像、そして働いているレストランへやってきた金髪の男の子と仲良くなるプロセスなどをめぐって、微妙かつ明確な書き換えが行われているのです。

アディーチェという32歳の作家がここ数年間で、どんなふうに力をつけてきたか、どんな方向へ向かおうとしているのか、この「アメリカにいる、きみ」いや「なにかが首のまわりに」をめぐる微妙な変化は、それをとてもよく表しているように思えます。ファン、必見のステージです!