しだいに歳をとっていく作家コステロの台詞が刺激的で、あまりに真実をついていて、ひょっとすると読者はめまいを起こすかもしれません(笑)。最初読んだときは、ここまで書くか、なんというリアル、と訳者も驚嘆しました。何冊も訳してきたのに、やっぱりやられました。
最初の「犬」と次の「物語」は短いけれど、すごく奥が深い。深くて、しかも何層にもおよぶ入り組んだ視点と価値観を含んでいる。そして、次のコステロ・ファミリーの話へとつながる。これは色鮮やかに織り込まれたタピストリーのよう。最後の「ひよこ」の胸を突かれる話から、ふたたび最初の「犬」へと回帰する。そんなふうに、7つの話が輪のように踊りながら連鎖する。それが『モラルの話』です。
ブエノスアイレスで、2017 |
J・M・クッツェーの最新作『モラルの話』、5月下旬発売の予定。現在ゲラ読みの真っ最中です。版元、人文書院のサイトには新刊予告も出ました!
スペイン語版 |
日本でも! おなじ5月ですが、スペイン語版より2週間ほどあとに日本語訳が追いかけます!
ここへいたる経緯は、「J・M・クッツェーの現在地」というタイトルで、『モラルの話』の解説というか、訳者あとがきに詳しく書きました。そこでも一部引用したのですが、クッツェー自身が英語版より他言語バージョンを先に出すと決めた理由を明言している「カルタヘナでのスピーチ」を文字起こししています。次回はそれについて!