2018/01/01

あけましておめでとうございます!

今年もどうぞよろしくお願いします。

2018年もまた、J・M・クッツェーとチママンダ・ンゴズィ・アディーチェで明け暮れる年になりそうです。
昨年9月にクッツェーのデビュー作『ダスクランズ』の新訳を出せたことは本当に幸運でした。それをめぐり「図書新聞3334号」の1-2面にインタビューが載ります。「翻訳文学も日本語文学」と大きなタイトルがつきました。

「クッツェーを読むとき、読者もまたクッツェーに読まれてしまう」という恐い(!)サブタイトルも……。

Philadelphia Museum of Art/© Succession H. Matisse,
Paris/Artists Rights Society (ARS), New York
この作家は2月で78歳ですが、新著 Moral Talesを英語版より先にスペイン語版で出そうとしています。まさに Born Translated、その姿勢に日本語訳者としてもチューンナップしていきたいと思っています。
 1月27日にコロンビアのカリブ海に面した城塞都市、カルタヘナで開かれるブックフェアに参加するというニュースが流れましたが、この新作から朗読するのでしょうか?
 そういえば、つい先日も、ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスに短編「Lies/嘘」を発表したばかり。これはスペイン語版でまず出る上記の短編集に含まれる作品です。

 さてさて、9月に41歳になるチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。ここ数年の彼女をめぐるニュースの多さには圧倒されっぱなしで、あちこちにアップされるインタビューやらトークやらの動画の多さ、もう追いかけきれません💦! 日本でも昨年は長編『アメリカーナ』の書評やエッセイ、スピーチなどの訳が雑誌に載り、4月には『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』が出て、それをめぐるイベントが開催されました。多くの人たちの心をわしずかみにするアディーチェのことば、視点、笑顔、いまや世界のオピニオン・リーダーといえるでしょう。

『早稲田文学女性号』に掲載された「イジェアウェレへ、15の提案にに込めたフェミニストのマニフェスト」も好評でした。今年はこの『イジェアウェレヘ』も書籍化したいものです。できるでしょうか、みなさん、ぜひ、応援してください!

 シングル・ストーリーではなく多くのストーリーが大切、とアディーチェはいいます。政治的に右とか左とかには関係なく、ややもすると単眼的になりやすい偏狭的な発言に、きっぱりと「ノー」といってその理由を明快に述べる。多くの人を納得させることばを発する彼女の知性は本当に魅力的です。

 アディーチェを初めて日本に紹介したのは2004年8月、北海道新聞に書いたコラムでした。彼女の初作『パープル・ハイビスカス』がオレンジ賞(現在のベイリー賞)の候補作になったときのことで、あれから14年かと感慨深い思いにかられます。
 2006年にクッツェーが初来日したときも、この『パープル・ハイビスカス』のことが話題になったのを思い出します。15歳のカンビリが悲劇的事件を経験しながら大きく成長するこの物語に、クッツェーが賛辞を寄せていたからです。この初作もまた日本語にしたいものですが。。。
 
 2018年、世界のなかの日本はどうなるのか? 日本語文学にどんな新風が吹き込まれるのか、心して見ていきたいものです。