
いまでこそ、東京の庭にも鈴蘭が咲くようになったけれど、わたしが上京した1968〜70年ころは、鈴蘭といえば北海道の花だった。札幌の花屋さんが切花を航空便で送るサービスをやっているからといって、母が毎年のようにアパートまで送ってくれた。それを持って、当時、桜上水に住んでいたジャズピアニストの菊池雅章さんのお宅まで、追っかけファンだったわたしは、厚かましくも届けにいったっけ。
札幌の花屋さんのサービスは、切花から根付きの株になって、これは1990年代になってからだけれど、第三詩集の帯を書いてくださった矢川澄子さんに札幌から送った記憶がある。黒姫に住んでいた矢川さんから「無事に根がつきました」とお便りいただいたのはいつだったか。

アン・バートンが歌っている曲:Sweet William にも出てきたなあ──と記憶はすでに故人となった人たちの影と絡まって、とめどなくあちこちに飛ぶ。香りがかもしだす、記憶の鈴蘭シャッフルだ。