Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2015/02/01

「アデレード報告記」を書きました

 昨夜から強い風が吹いている。唸るような。泣くような。怒るような。この不条理な世界を去って行いく死者たちの、去りかねている憤怒にみちた声を運ぶように。いまも吹いている。北の地方では烈しい吹雪になったようだ。いったい残された人間たちはどこに向かっていくのか。

 ようやくコラムが掲載されます。明日、2月2日(月)の「毎日新聞」夕刊です。昨年11月にアデレードで開催されたイベント「トラヴァース、世界のなかの J・M・クッツェー」について書きました。三日間にわたるイベントのようすや、クッツェー家を訪れたときの印象など。ジョン・クッツェーさんと笑顔のドロシー・ドライヴァーさんの大きな写真も載ります! 初日の朗読前にアデレード大学構内の庭で開かれたレセプションのときに撮影したものです。
「縦横に論じた3日間──クッツェーの全体像に迫るイベント」

 原稿はかなり早く、11月中に送ってあったのですが、日本でも世界でもたてつづけにさまざまなことが起きて・・・。

 右の写真は、イベント2日目にオーストラリア国内で限定発売された『Three Stories』(Text Publishing, 2014)にサインするジョン・クッツェー。この小さな本には、A House in Spain(2000)、Nietverloren(2002)、He and his Man(2003)が入っています。
 オーストラリアで彼の本を編集するText Publishingのスタッフも参加していました。
 
短篇「スペインの家」は、彼が70歳になったときアムステルダムで開かれたイベントで公開されたもの。そのとき今回のように参加者のために限定発売(配布?)された短篇と聞いています。「ニートフェルローレン」は2013年秋に「神奈川大学評論 76」に訳出しましたので、日本語でも読めます。デイヴィッド・アトウェルの研究によれば、この短篇はジョンの父方の農場フューエルフォンテインがあるカルーに、作家が別れを告げるための作品だそうですが、確かにそう考えると腑に落ちることがいくつもあります。「He and his Man」はご存知、2003年のノーベル文学賞受賞記念講演!