2014/06/24

作家「J・M・クッツェー」ができるまで

明日、発売です。

 クッツェーの『サマータイム、青年時代、少年時代──辺境からの三つの<自伝>』(インスクリプト刊)がもうすぐ書店にならびます! 全684ページ、3冊をコンパクトに一巻におさめた本なので厚めですが、持つと手になじむ大きさで、それほど重くありません。本文書体はとてもおしゃれな明朝体です。

 カバーは赤土と灌木のカルーの風景。内陸の町ヴスターまで往復したときに撮った写真です。南アフリカの初夏は空気が乾いていて、明暗がくっきり、ピントもばっちり。澄みわたった空の青かったこと!
 扉に、テーブルマウンテンやケープタウン大学の写真が使われ、ヴスター駅前のユーカリの並木道もあります。ページを開いて、びっくりしました。写真処理のすばらしさ。手に取って、ぱらりと開いてみてください。

 巻末には長めの解説と、11ページにおよぶ詳細な年譜──日本語としては初公開の、作家個人の歴史的事実をたくさん盛り込みました──そして著作リスト。さらに、解説ページには、ボーイスカウトのユニフォーム姿の少年ジョンと、英国紳士風に気取った23歳の青年ジョンと、30代半ばの作家クッツェーの髭の顔写真が・・・。Special thanks to John Coetzee です。フラップからは、軽く微笑む作家のプロフィールがのぞきます。これは近影。
 三冊の自伝的作品は、人間ジョン・クッツェーの生い立ちから、青年期、そして作家 J・M・クッツェーができるまでを作家みずからが描いたフィクションです。

 とまあ、ここまでは宣伝文句をならべましたが、この本を訳し終えて、ゲラを読み終えて、本もできあがってくると、もうほとんどライフワークを終えたような気分、数年来の肩の荷がおりた〜〜、という感じです。

 これで作家J・M・クッツェーの全貌を伝える本が、ようやく出せました。ジョン・クッツェーという人間が形成された背景、作家 J・M・クッツェーが立ち上がった瞬間、それは彼の仕事/作品を深く理解するには不可欠で、それこそが、70歳になる直前にみずから手の内を明かすように第三部『サマータイム』を発表し、世界の読者に伝えようとしていることなのですから(とまあ、わたしなどは思うのですが.......)。
 
 クッツェー作品の普遍性が、この危機の時代に生きる人間としての共感が、日本語使用者である「わたしたち」に投げかけるものに耳を澄ませてみてください。そこには掛け値なしの「生きるための文学」があります。

「クッツェーの真実」を伝える初訳が2冊も入り、全面改訳の1作も含めて本体価格4,000円は、とてもお買い得だと思います! 明日、25日(水)から書店にならびます。もちろんネット書店でも!
 まだまだクッツェー作品の翻訳、出版は続きますよ〜。