E. Costello : I believe in what does not need to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/04/07

「OUT OF AFRICA」は土産物店だった!

ゾーイ・ウィカムの『デイヴィッドの物語』を訳していると、こんな文章が出てきた。

白人家庭で受けているのは、ワンポイントにもってこいの解放のイコン、白黒まだらのホロホロチョウがついたナプキンらしい。
 サリーの頭のなかにふと浮かぶことばだ。アパルトヘイトからの解放も間近に迫る1991年、場所はケープタウン郊外に広がる砂地ケープフラッツ、その有色人種専用居住区に住むデイヴィッドと妻のサリー、そして2人のちいさな子どもたちが夕食のテーブルについている場面。

 わたしがケープタウン旅行のお土産に買ったのはナプキンではなく、美しい藍色のホロホロチョウのついた鍋つかみだ(写真上)。帰国してあらためて件の箇所を読んだとき、まじまじと、このホロホロチョウの「まだら模様」に見入ってしまった。たしかに「白」と「黒」の細かな、細かなまだらである。これが「解放のイコン」か、とウィカムのぴりりとした皮肉に、にやりとなった。

 そして、そのお土産を買った店の名前が、なんと、 OUT OF AFRICA だったのだ。これはもう、笑えるというか、なんというか。海外からの旅行客相手にレストランや土産物店などがならぶウォーターフロントで「OUT OF AFRICA」という店名を見たとき、そうか「アフリカから」なのだな、わたしも一観光客としてこの店「から」お土産を買って帰るわけだ、と奇妙に納得したことを覚えている。そのとき品物を入れてもらった紙のバッグ(写真右)がまた、サファリの、いかにもなイメージで、すごい!

 そう、OUT OF AFRICA は、いわずとしれたイサク・ディネセンの小説『アフリカの日々』(1937)の英語名である。80年代にハリウッド映画にもなった。日本では「愛と哀しみの果て」というタイトルで公開されたと思う。メリル・ストリープとロバート・レッドフォードが主演した、ケニアの農場を舞台にした映画だ。

 ケープタウン市内に立派な店を構え、ケープタウン空港にも支店を出す土産物店「OUT OF AFRICA」。もちろんディネセンが作品を書いたときは、こんなことになるとは夢、思わなかったにちがいない。映画化に後押しされてだろうか、この作品の名前がいま、外部から見たアフリカの「観光」のイメージにぴったり重ねて使われているのだ。

 そういえば、アディーチェも、新作短編集『明日は遠すぎて』に収めた「ジャンピング・モンキー・ヒル」で、ディネセンについてピリ辛の意見を登場人物たちにいわせたりしている。時の流れというべきか、「世界」を見る視点の当然の変化というべきか。

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追記:調べてみると、OUT OF AFRICA という名前、ほかにもたくさん使われていました! マレーシアのレストランの名前、USAのアフリカングッズを売る店、などなど・・・・・・。