Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2011/01/08

『サラ・バートマンとホッテントット・ヴィーナス』──(2)

この本は歴史学者が書いたものですが、堅苦しいところはあまりなく、図版も豊富に使われています。本扉を開くと図版の説明があり、そのつぎに「DRAMATIS PERSONAE/登場人物」と銘打たれたページがもうけられています。これが面白い!
 1770年代生まれのサラ・バートマンから始まって、彼女を解剖したフランス人医師ジョルジュ・キュヴィエにいたるまで、すべて歴史上実在した人物です。なんとディケンズの『ピクウィック・ペーパーズ』に出てくる人物のモデルになった人まで登場します。まことにドラマチック。
 では、以下にそれを紹介します。

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Sara Baartman and the Hottentot Venus : A Ghost Story and a Biography, by Crais & Scully : Princeton,2009

<登場人物>
サラ・バートマン:ヨーロッパで「ホッテントット・ヴィーナス」として知られた女性。サーキ・バートマンともいう。Sara(サラ), Saartje(サーキ), Sarah(サラ) とも表記される。

デイヴィッド・フーリー:植民者、サラの最初の主人。

コルネリウス・ミュラー:植民者、サラの二番目の主人。

ライダー・バートマン:サラの兄弟。

ピーター・セザール:ヘンドリックの兄弟で、エルツァーに雇われていた。サラをケープタウンに連れて行った男。

ヤン・マイケル・エルツァー:裕福な肉屋で、ケープタウンでのサラの最初の主人。

ヘンドリック・セザール:アンナ・カタリーナ・スタールの夫で、サラをイギリスへ連れて行った二人の男のうちの一人。

アンナ・カタリーナ・スタール:ヘンドリック・セザールの妻。

ヘンドリック・ファン・ヨンク:サラのオランダ人パートナー。

ヨハネス・ヤコブス・フォス:Burgher Senate(オランダ系市民議会) の大統領、ヘンドリック・セザールが借金をしていた相手。

アレグザンダー・ダンロップ:王立英国海軍の船医、ケープ・スレイブ・ロッジの医者でもあった。サラをイギリスへ連れて行った二人の男のうちの一人。

ウィリアム・ブロック:リヴァプール博物館の所有者。この博物館はロンドン博物館あるいはエジプト博物館としても知られる。

「聖」ザカリー・マコーリー:主要な奴隷廃止論者。イギリスでのサラの処遇について調査を指導した人物。

「聖」トマス・ベイビントン:主要な奴隷廃止論者。

スティーヴン・ガスリー:軍医ダンロップの弁護士、1815年にナイト爵に叙され、1824-37年に民事訴訟判事をつとめる。ディケンズの『ピクウィック・ペーパーズ』に出てくる「ステアリー判事」のモデルとなった人物。

クイーンズベリー公爵:ロンドンの有名な遊蕩者で、サラを自分が所有するピカデリーハウスで見せ物にするため連行させた人物。

ヘンリー・テイラー:サラをパリへ連れて行った男。

レオー:パリの動物調教師、店の持ち主で、ケープタウンではサーカス団のメンバーでもあったらしい。サラの最後の所有者。

ジョルジュ・キュヴィエ:科学者、比較解剖学の確立者。

(イギリス人、オランダ人、フランス人、さらに、もと奴隷の人につけられた名前と多様なネーミングがあるので、読み方がはたして正しいかどうか、ちょっと不明なところもありますのであしからず。)
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付記:人名の発音については、その後、明らかになったところを訂正しました。