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国益のため国家機密の保護をうたう法案だが、もし成立すると出版禁止や自由な議論の場が失われてアパルトヘイト時代に逆戻りする、と作家やジャーナリストたちは強く反発している。
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ヨーロッパ第2の規模を誇るこのブックフェアの、今年の焦点は「アフリカ」。ラトビア、エストニアなど、通常一カ国をテーマとするのにアフリカを一国扱いするのは、と批判もあったが、ゴーディマなど総勢70名の作家が28カ国から招かれた。
20年前は自他ともに認める反アパルトヘイト闘士で、1990年2月までは非合法だった解放組織アフリカ民族会議(ANC)の隠れメンバーだったゴーディマはいま、政権党となって金銭をめぐる腐敗のうわさが絶えないANCと真っ向から闘う立場に立たされている。
「それはもう皮肉をはるかに通り越している」とこの作家はインタビューで語る。「人々は自由を手に入れるために死に、大きな代償を払って自由を手に入れたと思ったのに、またしてもその自由が脅かされているのだから」と。
南ア国内ではこの法案に各界のリーダーたちも反対の態度を表明し、市民レベルの「R2K(Right to Know=知る権利)キャンペーン」も立ちあげられた。国外からの圧力も強い。
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憲法で保証された「情報へのアクセス権」をめぐる動きがどうなるか、それは今後この国がどこへ向かうかを知る重要な手がかりとなるだろう。
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付記:2010年11月9日北海道新聞夕刊に掲載されたコラムです。