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物語は10歳の少年オーランド・ザキが語り手。オーランドはもちろんフロリダのオーランドだ。赤十字からもらったTシャツの胸にそう書いてあった。だからそう呼ばれている。ザキは彼が発見された場所の名前だ。
キャンプにいる子どもたちはアカプルコ、ロンドン、パリといった具合に、着ているTシャツのキャッチコピーからとった、変な名前で呼ばれつづける。本人は意味がわからないまま、いつかその土地の人が自分を養子にしてくれることを夢想している。キャッチコピーだから、セクシーなんて名もある。
毎日、食料トラックが来るのを待ち、給水タンクが来るのを待ち、カメラマンが写真を撮りに来るのを待ち、戦争が終わるのを、家族が自分を見つけてくれるのをひたすら待っている。
この作品、平易な会話調で、ときにドキッとするほど過酷な日常がさらりと描かれている。そこが評価されたらしい。
ケイン賞の10年間の受賞者を見ると、ナイジェリアとケニアから各3人、南アフリカから2人、スーダン、ウガンダから各1人で、男女半々。
この賞はアフリカを、欧米の目からではなく、アフリカ人みずからの目で書くための場を作ってきた。その成果がバラエティに富むアンソロジーとなって、すでに何冊か出ている。たとえば今年出たのは『Ten Years of the Caine Prize for African Writing』
ぜひ、どこかで翻訳紹介したいものだ。
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北海道新聞2009年11月24日夕刊に掲載されたコラムに加筆しました。
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付記:2012.6.27/ 先日、都甲幸治さんと柴田元幸さんの対談を読んでいて、この短編を柴田さんが訳出紹介したという話が出てきて、おっ、そうなのか、と思った。もっとどんどん紹介されるといいなあ。今年、2012年の発表も間近です。