2008/12/27

「現代詩手帖2009年1月号」──ハンス・ファファレーイの詩

<沈黙のなかに滲み出るもの>

現代詩手帖 2009年1月号」に、オランダ領ギニア(スリナム)生まれの詩人、ハンス・ファファレーイ/Hans Faverey(1933〜90)について書きました。ぱらぱらと、のぞいてみてください。

 ファファレーイの詩を初めて読んだのは、J・M・クッツェーが訳したアンソロジー『漕ぎ手たちのいる風景─オランダからの詩/Landscape with Rowers──Poetry from The Netherlands,2004』のなかでした。

 まとまった詩篇が読める英訳詩集としては『忘却にあらがい/Against the Forgetting』がフランシス・ジョーンズ/Francis R. Jonesの訳で出ています。このアンソロジーは全9冊の詩集から過不足なく選ばれていて、ファファレーイという詩人の魅力をあますところなく伝えています。タイプ文字を思わせるタイトルと、ぼかした白黒イメージが印象的なカバー下方には、次のようなことばも。

「ハンス・ファファレーイは、彼の世代ではもっとも純粋な詩的知性の持ち主だった。彼が著した宝石のように美しい詩篇は、本を閉じたあとも永く、エコーのように心のなかに響きわたる。──J・M・クッツェー」

 ファファレーイの詩を訳していると、頭のなかがシーンと透明になる瞬間があって、澄んだ空気で心身が満たされていく愉楽を感じます。
 今回の紹介と訳出は J・M・クッツェー氏の協力と激励あって初めて実現したもの。2006年9月のクッツェー氏初来日のときの会見から、翌年12月の再来日時のやりとりを経て、フランシス・R・ジョーンズ氏が英訳からの訳出を快諾してくださるまでの経緯には、なにか運命的なものを感じます。お二人に深く感謝します!