


といったふうに、『鉄の時代』には写真がふんだんに出てくる。とりわけ、ユニオンデールの家の庭で撮影された幼い主人公の写真について語られる場面は、南アフリカの土地、労働、所有といったことが滲み出てくる場面で面白い。メタモルフォシスという語と巧みに絡み合わされ、時代が変わればそこに写っているものの意味も変わる、と時間/歴史との連想を誘って圧巻。クッツェーの写真論はやがて、2005年に発表された「Slow Man」のなかで詳しく展開されることになる。<了>
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日経新聞(10月12日付)に掲載された『鉄の時代』の書評がこのサイトで読めます。