Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2020/04/08

書評:関口涼子著・訳『カタストロフ前夜』

 「じんぶん堂」に関口涼子著・訳『カタストロフ前夜』(明石書店刊)の書評を書きました。

        声はわたし(たち)にも触れる

フランス語で書かれた3冊を、著者みずからが日本語に訳したという稀有な本です。もとの3冊、書名はこんな感じ。

 『これは偶然ではない/ Ce n'est pas un hasard』
 『声は現れる/ La Voix sombre』
 『亡霊食/ Manger fantôme』

 自作翻訳は、作家によってはややもすると部分的な表現の書き直しが起きやすいものですが、訳者である関口さんはこの本を原テクストにできるだけ忠実に訳したそうです。その意味は、本を読むとよくわかります。
 著者と訳者は同一人物ではあるけれど、書くことと訳すことに鋭く意識的であることは、著者が、そして訳者が、ファクトに対して誠実であろうとすることで、この訳書はそのことが浮き彫りになっています。いろんな意味でとても貴重な本です。おすすめです!

***
 非常事態宣言という名の引きこもり宣言が出て、今日から引きこもらざるをえない人が増えるけど、基本的に家で机に向かって仕事をする身には、ほとんど毎日が引きこもりなので、生活のペースはあまり変わらない。

 でも、医療現場、介護の現場、清掃や保育の現場、食料や必需品を作ったり売ったり詰めたりする現場、運送する現場、そういうところで働いている人たちに生活の基本的部分を負っていることを忘れずにいよう。心から感謝する。

 そして、今回の宣言の結果、仕事がなくなったり収入が途絶えたり、減収になったりする人に、政府は即座に現金を出す。そうしなければ生活が成り立たない人がいる。無条件ですぐに出さなければダメだと思う。そのための税金であり、そのための「政府」じゃないか。