Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2019/08/23

渇いた土地:ナマクワランド

ひさしぶりの更新になりました。

 うんざりするほど長かった梅雨に、いきなり猛暑が襲ってきて、疲労困憊の東京住人としては、そろそろ秋の訪れと、乾いた風を感じたいところですが、いっこうにその気配はなく、しとしと降る雨のなかで、終わりゆく夏を惜しんで蝉たちが鳴いています。
 気温は少し下がりましたが、今日も湿度は高く、そんなとき世界のあちこちに散らばった友人、知人たちがアップする写真にどれほど慰められるか。すずしい山の写真をみてほっと息をつきます。湿気の多い空気のあいまをぬいながら渇いた土地のことを思います。そんな「異界の」写真を2枚アップ!

Dried up Springbok area, 2019
8月末、南部アフリカのナマクワランドは冬から解放されて春が訪れる季節。その写真を2枚。撮影者は8年前のケープタウン旅行でお世話になった Fukushima Koshin さん。

 いつもなら一面に花が咲き乱れるころなのに、1枚めの写真にはまったく花がなく、石ころまじりの地面は乾ききっているとのこと。
 2枚めの写真にようやくナマクワの花、ナマクワランド・デイジーが……。これもほんの数週間の出来事のようです。
 以前、ここでナマクワランドのことに触れたのは、ゾーイ・ウィカムの『デイヴィッドの物語』を訳していたころ、ずいぶん昔です。2011年11月のケープタウン旅行でも、ナマクワランドまでは行くことはできませんでした。ケープタウンからはちょっと遠い。

Skilpad Nature Reserve,  Kamiesberg, 2019
その後、クッツェーのデビュー作『ダスクランズ』を訳しているとき、この作品の第二部がナマクワランドを舞台としていたことを思い出して、ああ、行っておくべきだったと思っても、あとの祭り! 
 2枚めの写真のまんなか奥に立っているのが、掘抜き井戸の翼です。オランダの風車を思わせる作りで、アフリカーナと自らを呼ぶようになったオランダ系の農民たちが、乾いた土地に井戸を掘り、水を調達したんですね。
 Kamiesberg カミスベルグは、忘れられない地名です。『ダスクランズ』に出てきたこの地名は、ヤコブス・クッツェーが象狩りの旅に出てまもなく、逃亡したディコップを従者クラーヴェルといっしょに追い詰める場所だった。

 南アフリカは、もう一度行ってみたい土地です。