Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2018/06/05

「すばるeye」にクッツェーの新作事情を書きました!

<なぜ J・M・クッツェーは最新作を英語で出さないか>

という文章を「すばる 7月号」に書きました。<すばるeye>のページで、6日発売です。

 最新作とはもちろん先日発売になったばかりの『モラルの話』(人文書院)ですが、いろいろ書いているうちに5ページになりました。9日(土)にB&Bで行なわれるイベントでも、このことは話題になるでしょう。

 現在のクッツェーがもっとも重要だと考えていること、つまり、クッツェーの現在地とでもいえばいいのでしょうか、『モラルの話』の訳者あとがきにも書きましたが、それが日本語読者にとってどんな意味があるのか、考えてみたいと思います。同時に彼の具体的な活動が、身振りが、世界の一つ一つの言語にとってどんな意味をもつか、「世界言語」としての英語との関係で、なにを明らかにしようとしているか。

 クッツェーはいま、みずからのたどってきた道を振り返りながら、自分の第一言語である「英語」が世界を乗っ取っていくやり方を痛烈に批判しようとしています。齢78歳で世界を飛びまわる姿には、非常に強い危機感が感じられます。鋭い指摘の向こうに見えてくるものはなにか?

 英語と他言語、英語と日本語、日本語と他言語、といった関係を、二項対立の枷をはずして考えてみたい。そうすれば「われわれの現在地」もうっすらと見えてくるかもしれません。