2014/07/13

お花が届いた:詩集の感想の代わりにと

ぴんぽ〜ん、とチャイムが鳴って、いつもの宅急便のお兄さんが、縦長のダンボール箱を抱えてドアの向こうにあらわれた。
「ええっ、大きいなあ、なんだろ?」ドアを開けて受け取った家人の声がする。
「お花みたいですよ」そのお兄さんの声もする。

 学生時代からしばらく「未踏」という同人誌を出していたことがある。花はそのとき誌面でいっしょだったYさんからのプレゼントだった。2冊目の詩集『山羊にひかれて』を出したとき、当時、M新聞の武蔵野支局長をしていたYさんが、吉祥寺で出版記念会を開いてくれたのは、1984年だった。
 あれから30年。仲間だった人たちのなかにはすでに故人となった人もいる。同人誌の題字を筆で書いてくれた師の安東次男も鬼籍に入った。今回は、みんなで集まるのもちょっと無理そうだから、と花を贈ってくれたのだ。その心遣いがとても嬉しい!

 4冊目の詩集『記憶のゆきを踏んで』を出したのは、ひとえに、J・M・クッツェーの作品『サマータイム、青年時代、少年時代』を翻訳する過程で、みずからの出身地の記憶と向き合わざるをえないと思ったからだ。花と同時に送られてきたメッセージには、「北海道から南アフリカまで一跨ぎのミューズ」ということばも添えられていた。わたしの詩に霊感をあたえてくれるものとはなんだろう? 今回にかぎっていえば、おそらく、翻訳という行為そのものだろうな。

 8月3日夜、「失敗して転んでも笑ってはいただくつもり」という中村和恵さんをゲストに迎えて、下北沢のB&Bで朗読会を開きます。ぜひ、足をお運びください。