Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2012/09/29

『リージェンツ・パークのミナレット』

スーダン出身で、大学を卒業後イギリスへわたり、現在アラブ首長国連邦に住む作家、レイラ・アブルエラー/Leila Aboulela の自伝的小説『ミナレット』がアラビア語に翻訳された。タイトルは『リージェンツ・パークのミナレット』、アラビア語になるとこのタイトルのほうがいい、気に入っている、と作家自身が自分のフェイフブックで述べている。

 以前「博物館」という短編を日本語に訳した者として、この作家はもっと日本にも紹介されていいと思いながら、南アフリカやナイジェリアの作家たちの作品で手いっぱいで、なかなか手ががまわらない。

 アルジェリア出身の作家、たとえばヤスミナ・カドラはフランス語から翻訳された──もちろんフランス語で書いている作家なのだから当然だけれど・・・。マフフーズのようなビッグなエジプトの作家はアラビア語から直接翻訳された。でも、エジプト出身のサーダーウィーは英語からだったし、モロッコのメルニーシーも英語からだった。

 このアブルエラーはハルツームで大学に通い、卒業後に渡英して統計学を学び、作品は英語で書いている作家である。上記の短編「博物館」で2000年に第一回ケイン賞を受賞、長編が3冊、短編集が1冊ある。現在、英語圏作家のなかでもアラブ社会の内側を描き、積極的に発言している作家として、日本でももっと注目されていいように思うのだけれど・・・。

 ちなみに作家の名前のカタカナ表記「アブルエラー」は、アラビア語の専門家に原語をあたってもらって確認したものだが、さらに原音に近い表記にすると「アブルエッラー」となるそうだ。