Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2011/02/19

「週刊ブックレビュー」のあとで

浅川マキの最初のLPは、友人が貸してくれたので部屋にもって帰って聴いた。何度か聴いた。LPはしばらくしてから友人に返し、そのまま、自分では買わなかった。1970年か、71年のことだ。

 いまみたいに簡単にコピーなんかできない時代だから、好きなときに取り出して聴くには、LPを買うしかなかった。でも、買わなかった。部屋で聴いたのは、サラ・ヴォーン、アン・バートン、ポップなところではキャロル・キングあたりだったか。

 それでも浅川マキのコンサートには友人に誘われて行った。1970年か71年初冬に立教大学で開かれたコンサート。すごい、なんという黒いフィーリング、と思ったけれど、LPは買わなかったし、追っかけにもならなかった。その理由が「週刊ブックレビュー」にでるために『ロング・グッドバイ』を読んですごくよくわかった。

 たぶん、浅川マキにわたしは出会いそこねたのだ。

 理由は、いまからみると頑固で、若い、ある「反発」だ。マーケッティングのための、過剰な演出。いや、それは、浅川マキというシンガーの実像のうえから、ある強烈なイメージをかぶせて売ろうとした演出への反発だったのだろう。そして事実よく売れたのだ、当時は。
 
 もう一度、浅川マキを聴いてみよう。そう思ったのは、NHKのスタジオ収録中に流れてきた彼女の歌声を聞いたときだ。巻上公一さんの指摘する「ミュージシャンとしての浅川マキのすごさ」も、なるほどと思った。いまは80年代以降の作品を聞いてみたい。すぐに買った2枚組のCD(まだ未開封、これからゆっくり聴くつもり)にはあまり入っていないけれど。

 巻上さん、貴重なきっかけを作ってくれて、ありがとう!!