Elizabeth Costello : I believe in what does not bother to believe in me.──J. M. Coetzee

2010/03/20

明日は・・・フランコフォニー祭へ!!

今日は春のプチ嵐のような風が吹いて、明日のお天気がすごく心配。なぜなら、明日は飯田橋の日仏学院でフランコフォニー祭があって、夜は、かのドベ・ニャオレがパフォーマンスをするというので、それを見に、それだけを見に、出かける予定だからです。

 ほかの催しに魅力がないわけではないのですが、なにしろ、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェの長編『半分のぼった黄色い太陽』(8月刊行予定)のゲラ読みが佳境に入っていて、時間がたっぷりあるというわけにはいかなくて、というわけなのです。それでも、それでも、わくわくします!

 先日、ドベについて書いた文章をここに転載して、イヴの気分を盛りあげましょう!

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 ドベ・ニャオレ/Dobet Gnahoréをご存知だろうか。コート・ディヴォワール出身の多才なアーチストだ。来日歴もあり「ナ・アフリキ」というアルバムがある。乾いた温かい風のような、伸びやかな声の持ち主。ネットではエネルギッシュに踊りながら歌う姿も見られ、アフリカでは音楽がダンスと切り離せないことを再確認させてくれる。

 生い立ちがまた面白い。カメルーンの劇作家ウェレウェレ・リキン(2005年の野間アフリカ出版賞受賞)が1985年にアビジャン郊外に創設したアーティストコロニー、キ=イ・ムボックで育った。父は著名なドラマー。12歳のとき、学校からドロップアウトして音楽や演劇の道に進んだ。決定的な出会いは、コロニーへふらりとやってきたフランス人、コリン・ラロッシュ・ドゥ・フェリンと恋に落ちたこと。99年に渡仏した2人はバンドを組んで活動開始、数年後には押しも押されぬ存在になった。

 ドロップアウトといっても日本とはちょっと意味合いが違う。あまり学校へ行かせてもらえない女子が多いアフリカで、フランス式教育から積極的にドロップアウトした成果は、ダイナミックなステージをみると納得できる。ヨーロッパに洗脳されいていないのだ。

「アフリカへ」という意味の先のアルバムに入っている曲は、ディダ語(お金/彼を信じて/教えて/追悼/虐殺)、マリンケ語(イッサ/一夫多妻/キイムボック讃辞)、コサ語(私の涙)、ウォロフ語(女たち/近親姦)、フォン語(泣かないで)、ゲレ語(私の息)、リンガラ語(略奪)、とアラビア語まで交えて多様な言語で歌われる。
 アフリカで起きていることを歌う( )内のタイトルがなんともリアル。そう簡単に「ハクナマタタ(No problem!)」とはいかないのだ、と。

 でも、ドベの歌を聴いていると、民族や国家におさまりきらない、パンアフリカンな現実を世界にむけて開いてみせる、しなやかな才能が確実に育っているのがよく分かる。力強い、媚びない、ドベのパフォーマンスは、本当に楽しみだ。

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(北海道新聞2月23日夕刊に掲載された記事に加筆しました。)