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このパターン。なんだろう、これは。そう、珈琲とか、ビールとか、ワインとか。一種のアディクトに似ていなくもない。ほとんど中毒のようになっていくところが。
それは読み手のなかに、それまで気づかなかったなにかの存在を喚起するからだ。名づけえないもの。でも、気になる。一度、気がつくや、もう無視できないなにか。そのような存在との出会いが、クッツェーを読むという行為のなかに含まれているように思えてならない。
それは間違いなく、新しい世界観への扉となる。風通しのあまりよくない部屋にいるとき、光と、風をほおに感じたいとき、窓をあけて、首を少しだけ上に向けてみる、そんな行為にも似ている、なにか。
photo ©Bert Nienhuis