オーストラリア版の The Pole and other Stories がText Publishing から出版されたのは今月の初めだった。早速、書評があちこちに載った。じつに細やかな、痒いところに手が届きそうな読みで展開された書評が The Conversation というネット雑誌(?)に載った。書き手のSue Kossew さんは1990年代、南アフリカ文学にまつわる研究書にいつも名を連ねている人だったという記憶がある。モナシュ大学で教えていらしたようで、2014年にアデレードで開かれたJ.M.Coetzee: Traverses in the World に参加したとき、わたしもチラッとお会いして話をした。
翌年2015年にイタリアのプラートで開かれたクッツェーと作品内に登場する女性をめぐるシンポジウムの主催者がモナシュ大学だった。そのこともまた、彼女の名前といっしょにわたしはしっかり記憶している。
今回の書評は、The Pole と他の短篇について、個別に紹介し論じる内容で、クッツェーのファンだけでなく、クッツェー初心者にとっても、この本を読むための良い手引きになるだろう。
書評ページの頭に犬の絵が出てくる。これがいい。このサイトにちょっとお借りすることにした。なぜ犬かというと、『モラルの話』では巻頭を飾った The Dog が今回の「短篇集」では最後に置かれているからで、その効果が抜群なのだ。今回の短篇集のような流れで読んでいくと、「犬」という短篇にはまた違った読みが可能で、動物と人間の生命との絡みで、ぐんと冴え渡る効果を生んでいるのだ。
その橋渡しをしているのがひとつ前の短篇「The Hope/希望」なんだけれど、どういうことかはぜひ、10月に出るイギリス版で確認してほしい。
今回の書評に見られる、「肉体が衰弱していくとき重要性が増してくるのは魂である」という読みは、キリスト教文化ならではの把握かもしれない。確かに。